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​ME MOON

​獅子座の満月

Madam Rose - マダム・ローザ

 天の川銀河にたどり着いたミームは、さっそく ”キラキラ” と輝く光を見つけました。すぐに乗っていた流星から飛び降り、光を目指してコンペイ糖のような乳白色の小惑星をポン・ポン・ポン・ポーンとリズミカルに4つふみこえて、たどり着くと、そこはオペラハウスでした。

 オペラハウスは真っ白なドーム型の屋根をしていて、その真ん中に、お月様みたいに丸い大きな天窓があって、そこから ”キラキラ” と輝く光がもれていました。どうやらミームが見つけた ”キラキラ” はこの光のようです。

 中に入ると女性が1人きり、舞台で歌っていました。雄大なミルキーウェイのような彼女の歌声にミームは、すっかり聴きほれてしまいました。まるで、川の流れの中を銀河の星々に溶け込んで、ゆったり——ゆったり——と漂っているような、とても気持ちの良い気分でした。

 歌が終わると彼女はミームに気がついたようで 「あら? いらっしゃい。かわいいお客さんね。でも、ごめんなさい。まだ開演前なのよ」といいました。

 彼女の声でミームは、われにかえり 「こちらこそ、ごめんなさい…… つい、あなたの歌声に聴き入ってしまって…… 」 「はじめまして。わたしはミームといいます」と丁寧におじぎをしました。

 豊満な身体に薔薇のような深紅のドレスをまとった彼女は、マダム・ローザと名乗りました。どうやら彼女は今夜のオペラのリハーサル中だったようです。

 ミームはリハーサルの邪魔をしてしまったことを謝ると、遠い遠い別の銀河にあるクエーサーから ”キラキラ” さがしにやってきたこと。このオペラハウスから ”キラキラ” が流れ出していたことをはなしました。

 マダム・ローザは毎晩、ここに来るお客のために歌っているので、このオペラハウスのある、ちいさな星から1度も出たことはないこと。でも歌うことが大好きなので、この星とオペラハウスでの暮らしに、何の不満もないことをはなしました。

 ミームは、はなしをきいているなかでマダム・ローザの大きな胸の谷間に、ブローチが ”キラキラ” と輝いている事に気が付きました。

 ミームがブローチのことをきくと 「これは1等星レグルスの欠片からつくられているの。とても、きれいでしょ? 」 「むかし、このオペラハウスの支配人だった人が、残していったブローチ —— 」 「もし、あなたが探している ”キラキラ” が、このブローチだったら、大切なものなので、あげることはできないの —— 」 と、遠くをみながら、すこし悲しげな表情でこたえました。

 そうしているうちに、ざわざわざわざわと、どこからともなく、たくさんのお客が入りはじめました。どうやらオペラの開演時間が近づいてきたようです。 「あなたも、ぜひ今夜の歌を聴いていらっしゃって?」「ブローチはあげられないけれど、かわりに歌をプレゼントするわ」といって彼女はオペラの準備に戻っていきました。

 ミームは、もっとブローチのはなしをききたかったなぁ ——  と少しの間、考えていましたが、マダム・ローザが舞台にあがり歌い始めると、ざわざわとしていたお客は静まりかえり、みな彼女の歌声に酔いしれました。

 マダム・ローザの歌声がオペラハウスの空気に共鳴して、ダイヤモンドダストのように、小さな小さな星々になり ”キラキラ” と輝きながら、天窓から流れ出していました。その ”キラキラ” はどこまでも、どこまでも、透き通った宇宙を流れ、やがて大きな川の流れになっていきました。

獅子座の満月

​情熱 | ドラマティック | 創造 | 自己表現

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Illustration : mio.matsumoto   Text : mio.matsumoto & Shun